partⅠ 全猟誌の2023年1.2月と3.4月号に再掲載された白石邦彦氏の「猟犬の性質と行動-鳥猟犬の猟技10項目」を簡単に紹介します。
鳥獣の専門家である白石氏が動物学的な見識に基づいて鳥猟犬について書いた記事で、ガンドッグのトライアルに大いに参考になる内容です。

1.猟が終わるまで同じような調子で捜索する
2.猟野の処理が敏速で要領良くかつ確実
3.捜索範囲がある程度広い
4.ゲームの探知が敏速・確実
5.ポイントが確実
6.バッキングができる
7.強い忠実心を持つ
8.適度の服従心を持つ
9.主人のたどる方向に捜索してゆく
10.主人との連絡を緊密にする

掲載号
60年前の記事でかなりのボリュームがあるためザックリと要点だけをまとめました。
1.猟が終わるまで同じような調子で捜索しなければならない ゲーム以外のものに気を取られて集中力を失ったり、ゲームに当たらず飽きてしまう犬ではいけない。
さらに日本の猟野は丘、川、湿地やイバラ、藤ツルなどが密生して非常に厳しいため充分な体力が必要である。
2.猟野の処理が敏速で要領よく確実であること より多くのゲームと出会うにはテキパキ処理して先に進む必要があり同時に確実でないといけない。
しかし敏速な処理は大雑把になり、逆に丹念な捜索は時間がかかる。
足を優先させた犬は目でゲームを見つけるようになり、鼻を押し出している犬は足がのろい。嗅覚を使いながら迅速に処理するには「要領よく捜索する」ことが必要で、ゲームが居そうな所だけを丹念に捜索することだ。
そのためにはゲームの臭いだけを求めるのではなく、嗅覚と視覚と経験でゲームが居そうな環境を判断して捜索すること。
第二は単純な地形はさっさと処理し複雑な地形の所は入念に捜索すること。
第三は同じところを行ったり来たりしないこと。
第四は用もないのに頻繁に主人の手元に戻って来てまた出直すような時間の無駄をしないこと。これは間違った訓練をした犬によくあることだ。
3.捜索範囲がある程度広いこと 広い範囲を捜索する方がよりゲームに当たる。とは言っても300、400m先を右往左往して走り回るのではない。日本の猟は主人が銃を抱えて犬のあとを歩くので、犬が馬のように走っては主人はついて行けない。
遠っ走りする犬は往々にして自分勝手に猟をしている。望ましい犬は開けた所ではある程度足を伸ばし、主人を見失いがちな所ではあまり遠くへは行かない。
このような犬は、犬の素質と主人との信頼関係と訓練によるものである。
4.ゲームの探知が敏速・確実であること ゲームをとらえるには主に地上の臭跡をたどるが、キジなどの地を這う鳥は敵がゆっくり追ってくるとその先を逃げてある程度のところで飛ぶ。しかし良い犬は地上の臭いだけでなく地表を漂う臭いや物音を察知し素早くゲームに近づくためゲームの横や前からも接近することができる。
犬がゲームの追跡を途中で止めて別の臭いに標的を変えることがあるが、これは犬がゲームの追及に自信がないから起こることで、
自信がない犬は要領の良い捜索はできない。

これは1963年(S38年)発行の白井邦彦著の「鳥猟犬」上下です
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◆ブリタニーは野山で雉を探す猟犬です。
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